・一般会社員
・勤続年数38年で60歳退職
・退職金は会社支給2000万円と確定給付企業年金800万円
・配偶者(60歳専業主婦)、他の扶養なし
・70歳まで無職
・65歳から年間200万円の老齢年金を受給
・医療費控除・ふるさと納税などは考慮しない
次に退職金を年金の受け取りする場合の税金および社会保険料の計算方法を示します。
計算5:年金額の確認(年金受け取り分)
今回の事例では、確定給付企業年金の受け取り期間を10年間として、元本を10年で単純割りして年金額とします。
事例 | 60歳〜64歳 | 65歳〜69歳 |
---|---|---|
(α):老齢年金のみ | ー | 200万円/年 |
(β):老齢年金と企業年金80万円×10年 | 80万円/年 | 280万円/年 |
(γ):老齢年金と企業年金40万円×10年 | 40万円/年 | 240万円/年 |
企業年金や老齢年金は「公的年金等に係る雑所得」として課税対象となります。
企業年金と老齢年金は、それぞれの決まりで概算の税金が徴収され振り込みされます。
多くの場合、確定申告することで適切な税金が算定でき、税金を払い過ぎている場合は還付を受けられます。
計算6:年金所得(年金受け取り分)
まず、計算の基本となる年金所得を求めます。
年金所得を求めるには、年金収入金額から年齢と年金収入に応じた年金控除額を差し引いて求められます。
年金所得=年金収入ー年金控除
年金控除は、65歳未満と65歳以上で下表の通りです。
年齢 | (a)公的年金等の 収入金額の合計額 | (b)割合 | (c)控除額 |
---|---|---|---|
65歳未満 | 600,000円までは所得金額0 | ||
600,001円から1,299,999円まで | 100% | 600,000円 | |
1,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 275,000円 | |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 685,000円 | |
7,700,000円から9,999,999円まで | 95% | 1,455,000円 | |
10,000,000円以上 | 100% | 1,955,000円 | |
65歳以上 | 1,100,000円までは所得金額0 | ||
1,100,001円から3,299,999円まで | 100% | 1,100,000円 | |
3,300,000円から4,099,999円 | 75% | 275,000円 | |
4,100,000円から7,699,999円 | 85% | 685,000円 | |
7,700,000円から9,999,999円まで | 95% | 1,455,000円 | |
10,000,000円以上 | 100% | 1,955,000円 |
各事例の年金所得は次の通りとなります。
(α):老齢年金のみ
60歳〜64歳:ー(なし)
65歳〜69歳:
年金所得=年間200万円ー年金控除110万円
年金所得=90万円
(β):老齢年金と年間80万円を年金受け取り
60歳〜64歳:
年金所得=年間80万円ー年金控除60万円
年金所得=20万円
65歳〜69歳:
年金所得=年間280万円ー年金控除110万円
年金所得=190万円
(γ):老齢年金と年間40万円を年金受け取り
60歳〜64歳:
年金所得=年間40万円ー年金控除60万円
年金所得=0円
65歳〜69歳:
年金所得=年間240万円ー年金控除110万円
年金所得=130万円
計算7:社会保険料(年金受け取り分)
社会保険料を最初に算出します。(所得税・住民税の計算に使用)
本来は前年の収入より社会保険料が算出されますが、簡易化するため当年の収入で国民健康保険に加入した場合の社会保険料を算出します。
国民健康保険は、無収入でも保険料がかかります。
保険料は『医療費』、『後期支援』、『介護』に分かれ、所得割、均等割、平等割を算出します。
『医療費』、『後期支援』:健康保険
『介護』:介護保険
無職の場合、所得が無いので所得割は0となるものの、被保険者数で科される均等割や世帯毎に科される平等割は保険料が算定されます。(ちなみに『割』となっていますが、〇〇割=〇〇分と考えると理解しやすいと思います)
ただし、所得の低い世帯などは健康保険軽減判定により『医療費』、『後期支援』の均等割および平等割は軽減してもらえます。
健康保険の区分 | 所得割 | 均等割 | 平等割 |
---|---|---|---|
『医療費』 | 所得に応じ | 人数分 軽減あり | 世帯分 軽減あり |
『後期支援』 | 所得に応じ | 人数分 軽減あり | 世帯分 軽減あり |
『介護』 | 所得に応じ | 人数分 | 世帯分 |
健康保険軽減判定
健康保険軽減判定に使用する『軽減判定所得』は、年金所得から特例控除15万円を差し引いた金額となります。
軽減判定所得=年金所得ー特例控除15万円
軽減判定所得が下表に合致する場合は、『医療費』、『後期支援』の均等割および平等割に軽減割合が適用されます。(市町村により違います)
軽減判定所得 | 今回の事例 本人+配偶者 の判定額 | 軽減 割合 |
---|---|---|
43万円+ 10万円×(給与所得者等の人数-1)以下 | 43万円以下 | 7割 |
43万円+29.5万円× (被保険者数と特定同一世帯所属者数の合算数)+ 10万円×(給与所得者等の人数-1)以下 | 102万円以下 | 5割 |
43万円+54.5万円× (被保険者数と特定同一世帯所属者数の合算数)+ 10万円×(給与所得者等の人数-1)以下 | 152万円以下 | 2割 |
今回の事例の軽減判定は次の通りです。
(α):老齢年金のみ
60歳〜64歳:ー(なし)
所得=0
軽減割合=7割
65歳〜69歳:
年金所得90万円ー特例控除15万円=軽減判定所得75万円
軽減割合=5割
(β):老齢年金と年間80万円を年金受け取り
60歳〜64歳:
所得=20万円
軽減割合=7割
65歳〜69歳:
年金所得170万円
軽減割合=なし
(γ):老齢年金と年間40万円を年金受け取り
60歳〜64歳:
所得=0円
軽減割合=7割
65歳〜69歳:
年金所得130万円ー特例控除15万円=軽減判定所得115万円
軽減割合=2割
社会保険料の算出
『医療費』『後期支援』『介護』は次の計算式で求められます。
税率や定額値は居住する市町村で違いがあります。
『医療費』所得割=(年金所得ー基礎控除43万円)×7.5%
『後期支援』所得割=(年金所得ー基礎控除43万円)×2%
『介護』所得割=(年金所得ー基礎控除43万円)×2%
『医療費』均等割=被保険者数×2.5万円×(1ー軽減割合)
『後期支援』均等割=被保険者数×0.8万円×(1ー軽減割合)
『介護』均等割=被保険者数×0.8万円
『医療費』平等割=2.5万円/世帯×(1ー軽減割合)
『後期支援』平等割=0.8万円/世帯×(1ー軽減割合)
『介護』平等割=0.8万円/世帯
(α):老齢年金のみ
60歳〜64歳:ー(なし)
軽減割合=7割
年金所得=0
『医療費』=22,500円
所得割=0
均等割=被保険者数2×2.5万円×0.3=15,000円
平等割=2.5万円×0.3=7,500円
『後期支援』=7,200円
所得割=0
均等割=被保険者数2×0.8万円×0.3=4,800円
平等割=0.8万円×0.3=2,400円
『介護』=24,000円
所得割=0
均等割=被保険者数2×0.8万円=16,000円
平等割=0.8万円=8,000円
60歳〜64歳の健康保険料
=22,500円+7,200円+24,000円=53,700円/年
65歳〜69歳:
軽減割合=5割
年金所得90万円
『医療費』=72,750円
所得割=(年金所得90万円ー基礎控除43万円)×7.5%=35,250円
均等割=被保険者数2×2.5万円×0.5=25,000円
平等割=2.5万円×0.5=12,500円
『後期支援』=21,400円
所得割=(年金所得90万円ー基礎控除43万円)×2%=9,400円
均等割=被保険者数2×0.8万円×0.5=8,000円
平等割=0.8万円×0.5=4,000円
『介護』=33,400円
所得割=(年金所得90万円ー基礎控除43万円)×2%=9,400円
均等割=被保険者数2×0.8万円=16,000円
平等割=8,000円
65歳〜69歳の健康保険料
=72,750円+21,400円+33,400円=127,550円/年
以下計算式省略
(β):老齢年金と年間80万円を年金受け取り
60歳〜64歳:
年金所得=0円
軽減割合=7割
『医療費』=22,500円
『後期支援』=7,200円
『介護』=33,400円
60歳〜64歳の健康保険料
=22,500円+7,200円+24,000円=53,700円/年
65歳〜69歳:
年金所得190万円
軽減割合=なし
『医療費』=170,250円
『後期支援』=49,400円
『介護』=49,400円
65歳〜69歳の健康保険料
=170,250円+49,400円+49,400円=269,050円/年
(γ):老齢年金と年間40万円を年金受け取り
60歳〜64歳:
年金所得=0円
軽減割合=7割
『医療費』=22,500円
『後期支援』=7,200円
『介護』=33,400円
60歳〜64歳の健康保険料
=22,500円+7,200円+24,000円=53,700円/年
65歳〜69歳:
年金所得130万円
軽減割合=2割
『医療費』=125,250円
『後期支援』=36,600円
『介護』=41,400円
65歳〜69歳の健康保険料
=125,250円+36,600円+41,400円=203,250円/年